甘い誘惑

体重が減った・・・ような気がする。


仕事帰り、フラッとラーメン屋に寄った。
そこは個人的にお気に入りの店で、店の前をしょっちゅう通っているのにもかか
わらず、長いこと行っていなかった。

店へたどり着くと、お決まりのとんこつセット(チャーシュー丼が付いてくる)の
食券を買い、店員に渡す。

ラーメン屋のラーメンはご無沙汰だったため、心の中でわくわくしながら待つ。

暑かったため、水を一口飲んでホッと一息。

そういえば、ジムに行き始めて以来、体重の推移が気になってしょうがない。
味が濃いもの、油っこいものなどが好きでよく食べる故、これも体重増加の要因
の一つに違いない。

これから目の前にやって来るラーメン、やはりこいつのスープにもそこそこの油
が浮いている。
ラーメンを食べるとほぼスープを飲み干してしまう。どうせ飲むなら油を少なめ
で頼めば良かった…

こんなことを考えながらこれから買い替えを考えているホームシアターセットに
ついてケータイで調べていると、

「お客さん!」

相変わらずいきなりで軽くびっくりしつつ顔を上げると、店員がラーメンの丼を
持って待っている。

すぐさまラーメンとチャーシュー丼を受け取り、しばしラーメンを眺める。

…あぁ、これだ。すっごく食べたかったんだ。

さっそくスープを一口。ほんのり甘い醤油とんこつの味が口の中に広がる。

うまい…。


いや、待て自分。
この丼の中にはかなりの量のカロリーが。飲み干したらまたぷっくり膨れかねな
いぞ。
少しは気にしだしたんだから、ここは少し我慢してスープを残さねば。

そう自分の中で決めて麺を食べ始める。

やっぱり…うまい…。


……

………

ふと我に返ると、丼の中身が空だった。



きっと何かがとりついているに違いない。

食べ物の恨みは怖いと言い伝えられているぐらいなのだから。